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【コラム】北欧の暮らしとごはん #01 スウェーデンの夏とザリガニ

はじめまして。コラム「北欧の暮らしとごはん」を担当する原ベックマン 彩子です。ご縁がありコラムを書かせて頂くことになりました。私自身の仕事やお店のこと、プロフィールなどは、ぜひインタビュー記事をご覧頂ければと思います。

初回コラムということで、何について書こうかなぁ…、とずっと考えていました。9月とはいえ、まだまだ厳しい暑さが続く日本ですが、今回はスウェーデンの夏はどのように過ごすのかをお話しようと思います。

スウェーデンの夏…、まず最初に思いついたのはザリガニでした。日本ではあまり食べられませんが、ザリガニはスウェーデンの夏に欠かせない食べ物です。

ザリガニは、111日から86日まで禁漁期間というものがあり、87日から解禁になるので、87日はKräftskiva(クレフトフィーヴァ)、というザリガニパーティーの日があります。毎年この日に絶対に食べる! というわけでもありませんが、8月になるとスーパーのどこへ行ってもザリガニの姿があります。とはいっても生でというものはあまりなく、茹でられた状態のものがほとんどです。産地はスウェーデン、スペイン、中国、トルコなどがありますが、やっぱりスウェーデン産の小ぶりで味がぎゅっと詰まったザリガニが美味しいです。

たっぷりの塩水とディルの花でザリガニを茹でて、その花の香りがついた塩水に浸った状態が売られているのですが、ディルの花はあまり日本では使われないですよね。スウェーデン語で、Krondill (クローンディル)、直訳するとディルの王冠という意味のお花で、とってもかわいい、黄色の小さなお花を咲かせます。ですが、ディルの味とはかなり違い、口の中で強い香りを放つのも特徴的です。

ザリガニ自体は、エビとカニの中間のような、ロブスターをぎゅっと小さくしたような味ですが、かといって日本でよく食べられる、ぷりぷりっとしたものではなく、もっとむっちりとした触感です。可食部分が少ないので、一人で1キロ分くらいはペロっと食べられます。

そしてなんといっても、このザリガニパーティーに欠かせないものが、スウェーデンで作られているチーズ、Västerbottenost(ヴェステルボッテンウスト)のパイ。パイといってもキッシュの様な見た目で、ヴェステルボッテンチーズをたっぷり使って、生クリーム、卵を混ぜた生地をパイに流し込み、薄めに焼いたものです。とにかくこのチーズが本当に美味しいので、味付けはシンプルに塩胡椒で頂きます。キッシュのように中に具を入れることはあまりありません。もし旅行でスウェーデンを訪れる際は、ほとんどのスーパーで売られていますので、ぜひ食べてみてください。



ザリガニパーティーでの食べ物と合わせて飲むのが
Snaps(スナップス)という40度を超えるじゃがいもで作られたアルコールです。この強いお酒を飲みながら、歌いながら、ザリガニを食べるのがザリガニパーティーです。このパーティーはデコレーションも可愛く、可愛い帽子や、ザリガニのデザインがほどこされたグラスやテーブルクロス、紙ナプキンなどもこの時期は多く販売されます。

年間に5週間の休暇が法律で定められているスウェーデン。夏はだいたいの人がバケーションを取ります。冬はずっと暗くて寒いので、夏は思いっきり太陽を浴びて、ザリガニを食べて歌って酔っぱらって、休暇を楽しんでいます。

実は、日本のIKEAでも夏になるとザリガニが売られていて、食べることができます。みなさんも機会があればぜひ、召し上がってみて下さいね。

最後に余談ではありますが、以前働いていたスウェーデンのレストランの同僚に、「日本はザリガニをペットにしている人もいるんでしょう?日本はあらゆる種類の魚を食べるのに、なんでザリガニだけペットなの!? (笑) 」と、ゲラゲラと笑われたことがありました。確かに言われてみればそうだなぁ、と改めて感じました。外から見る日本もまた気づきがあって、面白いものです。

 

Melting potオーナー
原ベックマン 彩子

鎌倉に生まれ育ち、スウェーデン人の夫と暮らす。服部栄養専門学校卒業後、世界の食文化に興味を持ち、さまざまなジャンルの飲食店で働く。カナダではベイカリー、スウェーデンではレストラン勤務を経て、鎌倉・長谷にスウェーデン料理を取り入れながら、カナダで学んだバターミルクビスケットやスープをメインとしたカフェ『Melting pot』を経営。現在に至る。

Melting pot
神奈川県鎌倉市長谷2丁目21−5
営業時間:8:00〜15:00
定休日:日曜、祝日

 

 

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