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【コラム】花あしらいLESSON #01 涼を生ける

 今年は梅雨の到来が遅く紫陽花も終わりを迎えつつある今頃、本格的な雨の日々を迎えました。今日も時を止めるかのように大量の雨が降り注いでいます。

去年の今頃、お母さんと一緒に来店したレインコートに長靴姿の女の子が突然「今、梅雨って言うんだよー○○先生が言ってたんだぁ。神様がお空からもうすぐ暑いナツが来るぞ〜、って雨を伝わってお知らせに来ているんだってー」っと。

さすが先生!うまい。
今年も暑い日々がやってきます。私たちも夏に向けて準備を始めました。

年々暑さが厳しくなる昨今の夏に少しでも涼をお届けできたらと思い、今回は涼しさを視覚で感じる花あしらいをご紹介させて頂きます。



ドウダンツツジで涼しさを演出

ツツジ科ドウダン属の落葉広葉樹。長く伸びた幹に小さな葉をサラサラとつけた姿が印象的な枝物です。大きな枝を長いままデーブルや床に置き、椅子に座って眺めるとまるで木陰でくつろいでいるような気分にさせてくれます。

堂々と枝を張ったこの木は人気があり、店舗のディスプレイや大きな空間の装飾などにもよく使われます。そして、この枝の最大の魅力は圧倒的な保ちの良さ。きちんとお手入れをすれば1〜2ヶ月ほど保たせることができます。

最近は人気に伴いかなり値上がりしているのですが、一本でサマになる姿と保ちの良さを考えると、意外とおトクなのかもしれません。


煙もくもくスモークツリー 

ウルシ科の被子植物のスモークツリーは、初夏を彩る個性的な枝ものです。もくもくと煙が立ち登るような花穂がミスティーでドラマチックな空間を作り出してくれます。

花色は “赤” と言われる赤ブラウンと “白” と言われる薄グリーン系のものがあり、それぞれ独特な雰囲気で、お部屋にアーバンな世界を彩ります。

初夏の短い間だけに出回るスモークツリー。簡単にドライフラワーにもなるので、長く楽しめる魅力的な枝ものです。


これ、
ニンジン!?

ピョローンと伸びた長い茎に丸いかわいらしい花をつけた姿。見ているだけで優しい気持ちにさせてくれる癒しの花 “キャロットフラワー” です。

この花ってニンジン!? そうなんです。いつも食べているニンジンの変異種の花なのです。ひょろひょろした茎とあちこちいろんな方向に向いた花は動きがあり、やわらかい空気感が漂います。

わたしがこの花を飾る時は手を加えず、その自由奔放に伸びる花自身に任せ、ただただボサっと飾ることにしています。


ライトグリーが爽やかなグリーンアナベル

アメリカを原産とするこの花は日本の紫陽花シーズンが終わりを迎えるころから出回る、グリーンの小さな花びらの紫陽花です。今出回っているのはまだ蕾のもの。開花したアナベルはこれから出荷を迎えます。

きみどり色のその花は夏の暑さを吹き飛ばす清涼感があります。

これから暑さを増すにつれ出回る大輪のアナベルは、飾っているうちにそのままドライフラワーになっていきます。花が軽いので逆さまに吊るさなくても真っ直ぐとした綺麗なドライフラワーができあがります。

わたしはこの時期にたくさんのアナベルを家に飾り、そのままドライにして秋のリース作りに活用しています。

 


水を飾ろう。清涼感あふれるデーブルコーデ

透明のガラスの花瓶に花や実を入れ込んで水を注ぎこみ、水と一緒に植物を飾るサブマージフラワー。

水の美しさを活かし、華やかに飾るスタイルは海外のパーティーシーンにも登場するスタイリッシュな飾り方てす。今回は涼しげなグリーンカラーの植物を使ってみました。

サブマージフラワーを飾るコツは植物を浮かばせないようにすることです。空のガラス花器に植物を入れ、浮かび上がらないように水を注ぎ込みます。

どうしても浮かび上がってくる場合は、小さな剣山または花留め、ガラスの小石またはビー玉を用意するといいでしょう。まず剣山(または花留め)に植物をセットして花器に入れ、剣山などの目隠しにガラス玉等を入れ水を注ぎます。用意する花や葉物は腐りにくく浮力のない肉厚なものを選びます。このサブマージフラワーはお花一本でも存在感が出るので、手軽に楽しめます。 

水と飾る花あしらいをもう一つ。

浮き花と置き花です。浮き花は文字通り水を張った器に花を頭首で切ってぽっかり浮かべます。この時はサブマージフラワーとは逆に浮力のある花を選びます。置き花は浅い器やお皿にお花を絵を描くようにしっかりと置いて楽しむアレンジです。いずれも折れてしまった花などをリサイクルできるアレンジです。

最後に今回使った枝物と草花の水揚げ方法をお伝えします。

植物は上に向かって水を吸い上げます。切り口の状態が悪いと花が水を十分に吸い上げることができなくなり、蒸発だけが進み水不足となってしまいます。これが水下がりになっている状態です。特に枝ものは茎が硬く、そのままではうまく水を吸い上げることができません。枝元を花バサミで縦に切り目を入れたり、金づちで叩き潰したりして水を吸う断面を多くし、より吸い上げられるようにして深めの水に入れて半日以上置いておきます。

草花は新聞紙で花全体をおおうように茎からくるっと巻き、枝ものと同じように茎をハンマーなどでたたき、長時間かけてたっぷり水を吸わせます。

より長くお花を楽しんでいただくために、大切なひと手間です。

素敵な花あしらいで、暑い夏を乗り切ってください。

profile
小倉眞子(おぐらまこ)

商社OLを経て渡米。滞在したシアトルでアメリカの豊かなライフスタイルを体験し、帰国後flowershopを鎌倉に開業。現在鎌倉花壇(鎌倉店)、express-style(逗子店)の地域に密着した個性的な2店舗を営み、逗子本店ではオープン当初より教室を主宰し今年で20年になる。
花あしらいレッスン 小倉眞子 ご挨拶 

 

 

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