葉山時間

Column

【コラム】わたしの葉山時間 #01

流れるように行き着いた葉山の奥座敷

はじめまして、山本朱美です。この度、「葉山時間」で連載コラムを持たせて頂くことになりました。今回は第一回目ということもあり、私が現在のライフスタイルに至った経緯などを書きたいと思います。

東京から湘南へ移り住み、現在住んでいる葉山で暮らしはじめ、あっという間に2年の月日が流れました。

海辺の開放的な雰囲気に憧れて鵠沼海岸や茅ヶ崎で過ごした時期もありましたが、年齢を重ねるにつれて、緑豊かであまり人が居ない静かな場所を求めるようになりました。住む場所に対して明確なプランがなかった私たちは、「古民家田舎暮らし」をキーワードに次なる移住の地をリサーチしていたんです。それが、今の我が家である山の上の古民家です。葉山を選んだというよりは、ただ何となく流れるように行き着いた土地が結果的に葉山でした。

20代は、いわゆるバリキャリと呼ばれる仕事人間で日付けが変わるまでオフィスにいることが当たり前。むしろそれがステータスだと思っていたので、ただひたすらキャリアを追いかけることに注力していました。都内を舞台に息つく暇もなく戦い抜いた私は、ヘトヘトになって立ち止まり、これから先のことをじっくりと考えるようになったんです。そして、駆け抜けた20代を振り返りながら、ようやく「人生の本質的な豊かさ」を熟考し、結婚を機に大きく方向転換することを決意しました。

その後、30代前半には都心の暮らしを捨て、海の近くで湘南ライフを楽しむようになりました。そして、30代半ばに差し掛かった頃、さらなるナチュラルライフを追求し、田舎暮らしをスタートしたんです。前述したように、偶然にも興味がある古民家との出会いがあり、葉山の秘境と呼ばれる奥座敷に移り住みました。

小さな山の上に佇む築60年の古民家は、総ひのきづくりで状態も良く、豊かな緑に囲まれており、山々を見渡せる最高のロケーションで、私たちにとっては十分な環境でした。ただし、古民家はやはり古民家であって、正直なところ住みづらく、冬はところどころ隙間風が吹き抜けるので、石油ストーブを3台稼働しても足りないほど寒いです。また、夏は夏で、どこからともなくムカデが額に落ちてきたり、この世のものとは思えぬ大ゲジが現れたり…、オオスズメバチとの戦いの日々もありましたし、虫嫌いの人にとっては、まるでホラーかもしれません(笑)。それでも、なぜかこの家が好きなのです。

 

古民家の一室。廃材で作った机でアロマの作業などをしています。

 

都会では空を見上げることも季節を感じることもさほどなかったけれど、葉山の暮らしは、太陽の角度や庭を彩る花々たちが四季の移ろいを教えてくれます。「東京が恋しくないか?」と聞かれると、恋しくなることもあります。東京には東京の良さがあり、洗練されたセンスが四方八方に転がっておりますし、とにかく刺激的です。しかしそこには、脳みそに余白を作り出してくれる美しい海や山々はありません。

現在はプチ自給自足を実践中で、自ら畑を耕し庭先で養鶏をしています。7羽の鶏を育てながら、ある程度の野菜は、自分たちで育てています。小さな山の集落に佇む我が家ですから、自然災害にめっぽう弱く、台風が来れば玄関の壁は壊れ、通電がストップすることもあります。そのため、プチオフグリッドを試みていて、雨水タンクや太陽光パネル、焚き火台、炭の常備も欠かしません。ですから、ライフラインが1週間滞っても暮らしていけるのです。オフグリッドに必要な諸々のアイテムを準備するにあたって十分な場所を確保できることも田舎暮らしの醍醐味だと言えます。

 

私が大好きな日本の医学博士であり、東京大学名誉教授でもある養老孟司先生が、「森に行け、自然を見ろ」と常々おっしゃる理由が今この暮らしを始めて、深く理解できます。

自然の中には、人生に必要な哲学が全て揃っているのです。

次回は、さらにディープな「わたしの葉山時間」をご紹介したいと思います。

 

株式会社MotherEarth代表
香りのプロダクト「ZEN 」プロデューサー
フリーマガジン「UPCYCLE」編集長
山本朱美

沖縄にある築60年の地域財産をリノベーションした古民家貸別荘「美ら民家」の運営をはじめ、香りのプロダクト「ZEN 」のプロデュース、フリーマガジン「UPCYCLE」の編集長を務めるなど、活躍は多岐に渡る。また、葉山にある古民家にて自給自足、エシカルライフを実践しており、そのライフスタイルも注目されている。

 

 

Column 一覧