【コラム】 #心地よい暮らしと、石けんと。 第12回 〜失敗という名の栄養 〜
- 2022.08.01
- コラム
すっかり暑い夏です。
葉山町では3年ぶりとなる、花火大会も開催されました。
家からチラりと見え隠れする花火を見上げながら、派手さはないけれど、こじんまりとあったかい、この街にふさわしい夏の風情を感じることができました。
今回は「失敗という名の栄養」についてお伝えしてみようと思います。
わたしはいま、石けんを作りながら、その楽しさをお伝えすることを仕事にさせてもらっています。そんな手作り石けんとの出会いは、じぶんの肌のコンプレックスと、子どものアトピーがきっかけでした。
手作りの石けんに出会ってからは、石けんにまつわる学びはもちろんのこと、植物療法や、精神世界、こころの学びへと、心が引かれるまま興味関心は流れるように繋がり、仕事となりました。
10代から転職を繰り返し続け、定職につけなかったわたしにとって、現在の時点で6年間も同じ仕事を続けられているのは奇跡的なこと。内側からの感覚を頼りに、ゆっくり歩み続けていれば、そのさきには光があるのだなということを、今では信じられるようにもなりました。
イヤでイヤで仕方がなく、コンプレックスだった肌トラブルと、子どもの辛そうなアトピー。 一見すると「辛いな、嫌だな、困ったな…」と思うような事ですが、そこから逃げるのではなく、「あえて、探究していく」という選択をしたことで、わたしにとって運命的ともいえる石けん作りと出会えた。という流れになります。
振り返ってみれば、それは仕事だけに限らず、生き方にも通じていたのだと気づかされます。
若い頃から漠然とした生きづらさ、周りの人と比べてできないことが多すぎる自分に劣等感を感じ苦しみながら、数々の「失敗」や「コンプレックス」だと思いこんでいた事は、知らず知らずのうちにわたしだけの「経験値」となっていて、湧き上がる感情の源のような、生きていくためにはなくてはならない「栄養分」になっていたことに気づいてからは、生きることもずいぶんラクになりました。
こんな風に生きづらさを少しずつ克服できたのは、たくさんの書籍や、ご縁があって出会えた方々から学んだからこそ。何一つとして一人で成し遂げることはできませんでした。 これまで支えてくださった方たちに、感謝の気持ちでいっぱいになります。
そして今いちばん大切にしていることがあります。
それは、「じぶんのこころの奥からの声や、直感を大切に暮らしていく」ということ。例えていうならば 、「いまはコーヒーではなく紅茶が飲みたい」「人目を気にせず鮮やかな色の洋服を着てみよう」「お腹が空いていないから今日は2食にしよう」 とか…。なんとなく思い浮かんだ直感を蔑ろにせず、そっとすくって大切にしてあげること。すご〜くシンプルに「なんとなく」を形にしてみるということ。
ですが、気をつけて欲しいこともあります。
もしも形にしたときの結果がしっくりこなかったとしても、じゃあまた今度にしようかな、と思えばよいだけ。「ダメなわたし」なんて落ち込まないという事を、どうか忘れずにいましょう。良いも悪いもなく、ぜ〜んぶひっくるめてあなただけの、かけがえのない「経験」であり、あなたの軸を太くするための大切な「栄養分」として捉えてみる。
植物に例えるならば1年で100cmも成長するサクラがあったり、1年に10cmほど成長する沈丁花があるように、十分な栄養があったとしても、育ってゆくスピードは人それぞれ異なるという事も忘れないようにしたいところです。
これからも湧き上がる「なんとなく」な感情を大切に在りたいと願っています。
【プロフィール】
手作り石けん教室『soapmaking studio uguisu』主宰
chitose
自身の肌の弱さと子どものアトピーをきっかけに石けん作りに興味を持ち、学び始める。2016年葉山町の自宅にて手作り石けん教室「soapmaking studio uguisu」を立ち上げ、現在はワークショップ、自宅でのプライベートレッスン、オンラインレッスン、体系的に石けん作りが学べるオリジナルカリキュラムなどを実施中。アート作品のような美しい石けんが並ぶインスタグラムも人気。